和服、きものとは?言葉、ニュアンスの違いで感じる印象
今回の記事では「きもの」についてご紹介。
「きもの」そのものではなく、それに付属または由来する、日本古くからの言い回しや、日本特有の感性やニュアンスによって感じる印象にスポットライトを当ててクローズアップします。
わかりやすい例は夏目漱石の「月が綺麗ですね」。こちらは日本では「愛してる」の意味合いがあることで有名です。
こういった独特の「感性」を今回はご紹介。一風変わった記事になるかと思いますが、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。
例に出した夏目漱石の「月が綺麗ですね」とは?
有名な言葉になりますが、こちらに例として挙げさせて頂きましたのでご紹介いたします。
日本が誇る文豪である夏目漱石。
その夏目漱石の有名な逸話の一つに「I love you.」を「愛しています」とそのまま訳すのは日本人的感性ではなく「月が綺麗ですね」と訳しなさいと言ったとされる話がございます。
実際はこちらの話は俗説で、本当に夏目漱石が言ったかどうかは定かではありません。
しかしながらこのフレーズは非常に有名な愛の告白の言葉として世の中に広まっています。
真実が如何様であれ、この繊細な言葉は多くの日本人の心に響いて残り、今日へと至っています。
きっともしこの言葉が後世で夏目漱石が言った言葉ではないと証明される日が来ても、この言葉の価値は落ちることはないでしょう。
そんな細やかで繊細なニュアンスについても下記でご紹介していきます。
「きもの」とは?
「きもの」とは何でしょう?まず間違いなく「着物」のことであり、「和服」を意味します。
しかしながら「着物」は漢字を見ると「着」る「物」です。
つまり、衣類であればどのようなものであれ本来は「着物」に該当します。
しかしながら日常生活でTシャツのことを「着物」ということはあまりありません。
ではなぜ「着物」は多くの場合「和服」を指す言葉になったのでしょうか?
日本の衣類の遍歴、歴史と共にご紹介します。
「きもの」の歴史
まずは時代ごとの「きもの」をご紹介します。
縄文・古墳時代
日本史の最初に習う、邪馬台国の卑弥呼女王の時代です。
この時代の衣類は正直なところ確固たる資料がなく、土偶や壁画などの出土物から察する形になります。
それらを見ると、シンプルなワンピースに近い形のものが多かったと推測されます。
奈良時代
聖徳太子及び遣隋使が活躍し、様々なものが唐(現在の中国)からもたらされた時代です。
衣類においても同様なことが言え、中国の「漢服」の影響を大きく受けた衣類が生み出されました。
ここがおそらく現在も「きもの」、和服と呼ばれる衣類の起こりになります。
平安時代
平安時代になると遣隋使が廃止され、また唐(現在の中国)が滅びたことから著しく国外との交流が滞り、その代わりに日本国内で独自の文化が形成されました。
学問的文化を例に挙げますとひらがなの誕生、百人一首の編纂などがございます。
そして「きもの」といたしましては有名な十二単が生まれたのもこの時代です。
鎌倉時代・室町時代
鎌倉時代の後半から室町時代になると武士が力を付けたことにより公家全体の弱体化が起こりました。
その結果上流階級の衣類と庶民の「きもの」が混ざり、布の材質に違いはあれど、階級ごとの「きもの」の形状の差はどんどんなくなり、統一されていきました。
江戸時代
江戸時代になると、もう私たちの良く知る「きもの」と同じ形になります。
振袖も江戸時代に誕生しました。
明治時代
明治時代になると文明開化により海外の洋服がだんだん庶民にも身近なものになっていきます。
しかしながら「きもの」というのは「着」る「物」全般を指す言葉でした。
そのためここで区別をするために「和服」という言葉が誕生したのです。
どうして「和服」を「きもの」と呼ぶのか
さて、上記で衣類の歴史をご説明し、「きもの」という大きなカテゴリから「和服」と「洋服」の二つに大きく分かれたことを記述いたしました。
ではどうして「和服」を「きもの」と呼ぶのでしょう?
それは至極簡単になります。単に「今までずっと和服のことをきものと呼んでいたから」に他なりません。
他に身近な例で言うと「信号機の青」が例に挙げられます。
信号機の青色は、実際にはだれの目から見ても緑色です。
これはもともと日本では緑色という概念があまりなかったことに由来します。
緑色の概要があまりなかったため、多くの緑色のものを青色と表現していたのです。
「青々と茂る草木」、「青葉」、「青じそ」、「青唐辛子」、「青りんご」、「青虫」、「青汁」…
ぱっと思いつくものでこれだけ数が出てきます。
これらは全て「もともとそう呼んでいたから」という理由で、だれもが緑色だとわかった上でそのまま呼ばれているのです。
同様なことが「きもの」にも言えます。
「和服」という名前が生まれたものの、もともと「きもの」と呼んでいた、なので「きもの」と呼ぶ。
私たち日本人はは日常的に「きもの」を着なくなって久しいです。
「着るもの」と言われて真っ先に思い浮かぶのはまず間違いなく「洋服」の方でしょう。
しかしながら「きもの」と言われて思い浮かぶのは「和服」の方です。
「きもの」が日常的に着るものではなくなってなお、かつての文化が根強く現代まで受け継がれているのですね。
「きもの」のニュアンスの違い
日本語には3つの文字がございます。
「ひらがな」「カタカナ」「漢字」です。
和服のことを指す「きもの」ですが、それぞれの文字から感じるニュアンスの違いについて考えていきましょう。
- 「着物を用意して」
- 「キモノを用意して」
- 「きものを用意して」
それぞれ漢字、カタカナ、ひらがなで表記した例文になります。
それぞれにどんな印象を受けるか一つずつ見ていきましょう。
「着物を用意して」
漢字で表記の「着物」を使った文章です。
どの場面で使われるかによりますが、だいたいの人が「和服を用意して」という意味にとらえることでしょう。
もしくは場面によっては「着るものの誤字かな?」と思うぐらいのはずです。
違和感のないきれいな、一般的な日本語で、「普通の文章」の印象を受けるでしょう。
「キモノを用意して」
カタカナ表記の「キモノ」を使った文章です。
急に非日常感が出ますね。まるで小説の一文です。
名詞をカタカナで記載するというのはインパクトを持たせ、意図的に目立たせる表記になります。
理科で植物の名前を書くときはカタカナにする、というルールがございます。
このルールはもともと文章の中で特定の名詞を見落とさないよう目立たせるために使用されるようになったルールです。それと同様ですね。
また、カタカナは外来の和製英語の名詞にも使われることが多いです。そのためカタカナ自体に海外のイメージが付属します。
そのためこちらの文章は小説の一文にあれば「海外の方が言っているんだな」と言外に読者に伝える、もしくは「着物」や「きもの」ではなく、わざわざ「キモノ」と表記する何かがあるんだ…!と読者に悟らせることができるものになります。
何かがある違和感、もしくは特別感を抱かせる日本語で、「特徴のある文章」の印象を受けるでしょう。
「きものを用意して」
ひらがな表記の「きもの」を使った文章です。
カタカナ表記の「キモノ」と違い、日常的に使ってもおかしくない文章です。
メールやチャットツールでこの文章が出てきた場合、受け取り手は「変換ミスかな?」もしくは「わざわざひらがなで書いているのかな?」と感じることでしょう。
そしてホームページやパンフレットなど、きちんとした文章が載せられるべき箇所にこの文章があった場合、多くの人は「わざわざひらがなで書いているんだな」と認識します。
しかしながらカタカタ表記ほど違和感はございません。
漢字表記のものをひらがなで書くことは時折日本語の文章の中に存在するからです。
漢字の読めない幼児向けの本や、漢字が連続して続く場合、文章を読みやすくするためにわざと一部をひらがな表記にするなどです。
つまりひらがな表記には日本人特有の「気づかい」が多分に含まれる場合が多く、それもあってかひらがな事態に柔らかなイメージが付属します。
そのため、情緒にあふれた優しさのある日本語で、「柔らかな文章」の印象を受けるでしょう。
どの表記が望ましいのか?
ここまで「きもの」の言葉に至るまでの歴史、そして表記の仕方によって感じるニュアンスの違いについてご紹介しました。
それでは結局のところどの表記が望ましいのでしょうか?
それはズバリ、時と場合、そして好みによります。
上記で挙げた、ひらがな、カタカナ、漢字どの例文も間違いではございません。
同時に絶対に正しいものもございません。
例えば、海外の方向けに表記する場合は「KIMONO」とローマ字で表記する方が適切で親切です。
相手がどう受け取るか、相手にどういった印象を抱いて欲しいか、相手のことを考えて、相手に伝えたいことがより齟齬なく伝わるように表現する。
そういった気持ちで綴られた文章こそが最良の、望ましい表記の文章になります。
ちなみに、今回の記事では大半の「着物」のことを「きもの」とひらがなで表記しています。
この表記は柔らかさと情緒と少しの特別感が伝わるようにと意図的に、今回のコラムに望ましいものとして表記しています。
どんな時に着る?「きもの」の種類
「きもの」に関する言葉について、上記までで大まかに記載させて頂きました。
ここで根本的な問題に一度戻ります。
「きもの」とは「和服」のことです。
では、和服にはどんな種類があるのでしょうか?
しかしながら「きもの」に含まれる種類や名称は膨大です。
それこそ「きもの」の種類だけで記事がもう一つ書けてしまうほどの量がございます。
そのため今回は主に暮らしのどのような場面で着用するかに沿って解説します。
- お祭り
- 観光や普段着
- 成人式
- 卒業式
- 結婚式
お祭り
お祭りで着るのは主に「浴衣」です。
昔は寝間着として使われていた浴衣ですが、現代では夏の遊び着として形を変え親しまれています。
他のきものに比べるとかなりカジュアルで、サンダルと合わせたり、ドレスのようにリメイクしたり、現代にあわせて様々なアレンジも楽しまれています。
観光や普段着
きものを着て京都で観光、なんて聞いたことはございませんか?
きものを着て観光地で写真を撮れば映えること間違いなし!スマートフォンが普及した現代ならではの楽しみ方です。
観光をする際によく着用されているきものは主に「紬」「小紋」に分類されます。
「紬」「小紋」はいわゆるちょっとしたおしゃれ着。浴衣よりはしっかりしているけど、礼服ではないといった形です。
また、現代ならではの新しいカテゴリ、「洗える着物」も人気ですね。
成人式
成人式で主に着用されるきものは振袖です。
振袖は未婚女性が着用するものとされ、他のきものより袖が長いのが特徴です。
「振る」という行為に良くないものを祓ったり、神に祈るという意味があるとされていて、
華やかなお祝いの場に適しているきものとなっています。
卒業式
卒業式でよく着られているのは俗にいう「卒業袴」です。
この卒業袴の由来は明治時代に遡ります。
当時の女学校において制服として使用されていたのがこの卒業袴なのです。
現代において袴を制服として着ることはなくなりましたが、
学ぶ女性の象徴として現代まで文化が残り、時代にあわせて変化した結果が卒業袴になります。
結婚式
結婚式で新婦様が着られるのが「白無垢(しろむく)」「色打掛(いろうちかけ)」「引き振袖(ひきふりそで)」、
親族の方が着られる黒い着物が「黒留袖(くろとめそで)」になります。
「白無垢(しろむく)」はウエディングドレス、「色打掛(いろうちかけ)」「引き振袖(ひきふりそで)」はカラードレスに相当します。
場面にあわせたきものをご紹介しましたが、ここでご紹介したのは本当に簡単な触りだけになります。
もしご興味のある方はきものの種類について単独で記事がございますのでそちらをご覧ください。
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今回の記事では「きもの」の由来や歴史、文字についてご紹介させて頂きました。
いかがだったでしょうか?
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