「白」の種類一覧!白い着物が与える印象や注意点も
純潔なイメージを持つ白い着物に、一度は憧れた方もいらっしゃるのではないでしょうか。例えば、着物での結婚式では、花嫁の婚礼衣装として全身を白で統一した「白無垢」が人気を集めています。
しかし、「白」とひとことで言っても、その種類はさまざま。色味や明るさの違いによって、同じ「白」であっても醸し出す印象は大きく変わります。
そこで本記事では、代表的な白の種類や白い着物が与える印象などを解説します。自分が本当に気に入った「白い着物」を選ぶ際に、役立つ内容を集めました。
こんなにある!代表的な白の種類
代表的な白色の例は、次の通りです。
- 白(しろ):スタンダードな白色
- 純白(じゅんぱく):混じり気のない白色
- 銀白色(ぎんはくしょく):銀色を帯びた白色
- 雪色(せっしょく):真っ白な雪の色。紫や紅みがかかっている白色
- 鉛白(えんぱく):鉛から作られる白色
- 月白(げっぱく):月の光のような、薄い青みのある白色
- 魚吐白(ぎょとはく):魚の胃袋のような、青みのある白色
- 乳白色(にゅうはくしょく):白色
- 卯の花色(うのはないろ):卯の花のように黄みがかった白色
- 白百合色(しらゆりいろ):白百合の花のようにわずかに黄みがかった白色
- 白練(しろねり):絹を白練した白色
- 胡粉色(ごふんいろ):日本画に使われる、黄みがかった白色
- 生成色(きなりいろ):ベージュがかった自然な白色
- 白磁色(はくじいろ):透明感のある白色
- 象牙色(ぞうげいろ):黄みがかった白色
スタンダードな白色に加え、白にはこれだけの色味があります。
黄みがかった白色は、いわゆるアイボリーに近い白色というとイメージしやすいかもしれません。暖色系の色味を感じる白色で、温かい印象や柔らかい印象を演出できます。
反対に、銀や紫などの寒色系が混ざった白色は、透明感や涼しげな印象を感じさせることが可能です。
また、「黄みがかっている」とひとことで言っても、ニュアンスや度合いによってさらにさまざまな色の種類にわかれます。そのため、白の着物を選ぶときは実物を見た上でお気に入りのものをチョイスすると失敗が少ないでしょう。
なお、同じ色味の着物であっても素材によっても印象が変わります。着物の着用を検討する際は、生地の質もしっかりと確認しておきましょう。
着物における色の役割
ここで、着物における色の役割について紹介します。
- 身分や階級を表す
- 季節感を演出する
- 重ね着を楽しむ
身分や階級を表す
もともと、着物に施された色は着用する人の身分や階級を表していたと言われています。
聖徳太子が制定した「冠位十二階」において、それぞれの位を色で表すことで身分を区別していたことがはじまりです。
冠位十二階によって定められた色は「禁色(きんじき)」と呼ばれており、身分の低い人が着用することは禁止されていました。
このような身分や階級を表す色の規定は、内容や名称の変更がありつつも江戸時代まで続いたといいます。
季節感を演出する
着物には、色や柄を季節によって使い分ける楽しみ方があります。
四季がはっきりとしている日本では、着物においても四季を意識した着こなしを大切にしています。気温調節のために着物の素材を気にするだけなく、季節に合った色や柄のものを着用することがその例です。
例えば桜がきれいな春であれば、明るいピンク色などのパステルカラーの着物を着用します。桜の季節が過ぎれば、初夏を意識した藤色や緑色を取り入れるのがおすすめです。
このように、着物の色は身分を表すだけでなく、四季を表現するものとして多くの日本人に親しまれてきました。
重ね着を楽しむ
着物の醍醐味のひとつとも言えるのが、重ね着を楽しむことです。
着物には、長着の他にも帯や半衿、重ね衿などたくさんの小物を合わせます。それぞれの色味によって個性を出すことができるのはもちろん、重ね着によって美しいグラデーションを演出できます。
着物の色をうまく活用することで、長着と襟のコントラストやグラデーションを楽しむことも可能です。
白い着物の特徴
続いて、白い着物の特徴や印象についてまとめました。
- 清潔感がある
- 顔映りが良くなる
- 花嫁衣裳にもぴったり
- 物足りない印象になることも
清潔感がある
白い着物の最大の特徴とも言えるのが、清潔感です。
「純白」という言葉があるように、白は身につけるだけでその人に清潔感やクリアな印象を与えてくれます。
着物に限らず、白のファッションは着るだけで爽やかな雰囲気に仕上がります。
顔映りが良くなる
着用するだけで顔映りが良くなることも、白い着物の特徴です。
他の色味と比べて光を反射しやすい「白」は、着る人の顔をパッと明るく見せてくれます。特に晴れた日の野外や、屋内のスポットライトが当たる場所においては効果抜群でしょう。
花嫁衣裳にもぴったり
普段着としての着物にはもちろん、花嫁衣装にも白の着物がぴったりです。
「白」は何色にも染まらないことから「はじまり」を思わせる色でもあります。結婚式や卒業式など人生の節目や門出のシーンにもふさわしい色と言えるでしょう。
花嫁衣装として有名な「白無垢」は、長着や小物をすべて白で統一した最も格式が高い和装。「嫁ぎ先の家に染まる」という素敵な意味が込められています。
物足りない印象になることも
清潔感がある一方で、白の着物は他の着物と比べるとどうしても物足りない印象になることがあります。
着物の種類にはよりますが、中には赤などの鮮やかな色味に、松竹梅や鞠などの大胆な模様を施した着物も存在します。そのような着物と比較すると、どうしても華やかさに欠けてしまうのがデメリットです。
「白ならではの清潔感をキープしつつ、華やかな印象もプラスしたい」という方は、白地に他の色味で刺繍を加えた着物や、グラデーションの着物を着用するのがおすすめです。
「白」を楽しめる着物の種類例
続いて、「白」を楽しめる着物の種類の例をまとめました。
- 白無垢
- 色留袖
- 訪問着
- 色無地
- 小紋
- 紬
白無垢
白無垢とは、長着や小物をすべて白で統一した、女性が着用する第一礼装です。現代では、女性の婚礼衣装として用いられています。その名の通り長着や小物が白で統一されているため、白い着物の代表格と言えるでしょう。
女性の婚礼衣装の中でも最も格式高い白無垢には、「嫁ぎ先の家に染まる」という意味が込められています。そのため、同じく婚礼衣装の「色打掛」を一度着用した女性は「白無垢」を着用できないというルールが設けられています。
女性が「婚礼衣装として白い着物を着たい」と考えている場合は、白無垢を選ぶのがおすすめです。
色留袖
留袖とは、振袖の袖を短く留めた袖をもつ着物のことです。普段着ではなく礼装のため、結婚式に出席するときなどのフォーマルなシーンで着用するのが一般的です。
留袖は、黒地の「黒留袖」とそれ以外の「色留袖」にわかれます。黒留袖を着用できるのが既婚女性のみに限定されているのに対し、色留袖は未婚・既婚問わず着用可能です。色味もさまざまで、白地の色留袖も存在します。
フォーマルな場所で白の着物を楽しむなら、色留袖を検討しましょう。
訪問着
訪問着とは、正礼装につぐ準礼装に当てはまる着物です。結婚式や披露宴、卒業式からパーティーまで、幅広いシーンで着用できる着物です。
カラーバリエーションもさまざまですので、白地の訪問着を楽しむことも可能ですよ。ちなみに、先ほど紹介した色留袖には上半身に柄が入っていないのに対し、訪問着には肩から裾に「絵羽模様」が施されています。
なりたい雰囲気や使用シーンに合わせて使い分けましょう。
色無地
色無地とは、着物の地色が単色で染められているものを指します。カジュアルな場面からフォーマルな場面まで幅広く着用できるため、1枚持っていると便利な着物です。
主な着用シーンは、お茶会やお稽古事など。特に茶道の場では、派手な柄物よりも静かな印象のある色無地が好まれる傾向にあります。
柄のない着物ですので、「シンプルな白い着物を楽しみたい」という方にぴったりです。
小紋(こもん)
小紋(こもん)とは、細かいパターン模様が施された着物です。訪問着や色無地と比べるとカジュアルな格式で、お茶会やちょっとしたお出かけ用、普段着として用いられます。
白の着物をカジュアルな場所で楽しみたい場合は、白の小紋をチョイスしましょう。柄が全体的に入っている小紋であれば、白の着物でも寂しい印象を与えないでしょう。
「カジュアルなシーンで使える着物がほしい」「白い着物を着たいけれど、物足りない印象は避けたい」という方におすすめの着物です。
紬(つむぎ)
紬(つむぎ)とは、その名の通り紬糸などを使用した織物のことを言います。絹独特の光沢感のある着物で、普段着やおしゃれ着として着用されています。そのため、結婚式などのフォーマルなシーンには不向き。反対に、パーティーやお稽古などのカジュアルな場面に最適です。
小紋と同様、「カジュアルなシーンで着用できる白い着物が欲しい」と考えている場合は、紬を選ぶのも一つの手です。
白い着物のコーディネート
続いて、白い着物を着用する際におすすめのコーディネートについてまとめました。
- 同系色でまとめる
- ダークトーンの帯を着用する
- アクセントとなる色味を加える
同系色でまとめる
柔らかい印象でまとめたい方におすすめなのが、白い着物に、同系色の帯や小物を合わせるコーディネート。白地の着物に、同じく白っぽい帯や、緑・黄色などのパステルカラーの帯を身につけたコーディネートが当てはまります。
全体を白や淡い色などの同系色でまとめることで、全体的にふんわりとした優しい印象に早変わりします。淡く繊細な色味を楽しめるでしょう。
着物が白と他の色とのグラデーションになっている場合は、同じ色味の帯を身につけるとまとまった印象に仕上がりますよ。
ダークトーンの帯を着用する
白い着物と反対の印象である、黒などのダークトーンの帯を用いるコーディネートもすてきです。
白い着物はきれいで美しい反面、膨張して見えないか不安を抱く方も少なくないはず。そこでダークトーンの帯を着用すれば、適度に引き締まった印象を与えることができます。
また、可愛らしい印象だけでなくシックな要素をプラスしたい場合も、ダークトーンの帯はぴったりですよ。
アクセントとなる色味を加える
続いておすすめなのが、白の着物にアクセントとなる色味を加えるコーディネートです。赤や青など、色味の強い帯を合わせることで、白の着物にワンポイントを加えることができます。
白地の着物に帯の色味が映えてとても素敵ですよ。ダークトーンの帯とはまた違った、遊び心を演出できる点も嬉しいポイントです。
白い着物の注意点
最後に、白い着物を着用する際の注意点についてまとめました。
- お呼ばれ結婚式では花嫁より目立たないものを選ぶ
- 食事や外出で汚さないようにする
お呼ばれ結婚式では花嫁より目立たないものを選ぶ
結婚式に出席する際に白の着物を着用する場合は、花嫁よりも目立たないものを選ぶように注意しましょう。
一般的に、結婚式における白い衣服は、花嫁の特権です。ドレスではマナー違反となるものの、着物においては必ずしもそうではありません。着物の場合は白地に柄が施されているものがほとんどのため、問題ないと言われています。
しかし、花嫁よりも目立ってしまうような白い着物は避けた方が良いでしょう。
食事や外出で汚さないようにする
シーンを問わず、白い着物を着用する際は食事や外出で汚さないように気をつけましょう。
白は他の色味と比べて、ちょっとした汚れもすぐに目立ってしまいます。着物は高価なものが多いですから、長く大切に着用する意味でも汚れには十分注意しましょう。
ちなみに、もし着物を汚してしまった場合はプロに染み抜きを依頼するのがおすすめです。汚れの種類によっては家庭用の中性洗剤で対応できる場合もありますが、着物の生地を痛める可能性もありますので、プロに依頼するのが安心でしょう。
白の種類一覧まとめ
今回の記事では、代表的な白の種類や白い着物が与える印象などについて解説しました。
「白」とひとことで言っても、微妙な色味やニュアンスの違いによって、さまざまな名称がつけられています。着物の色味のわずかな違いによって印象は大きく変わりますので、「白い着物をオーダーしたけれど、思っていたのと違った」ということにもなりかねません。
自分の目で実物をしっかりと確認した上で、「これだ!」と思うものをチョイスすることをおすすめします。