2023.03.06
和装について

着物の種類や歴史を徹底解説!着用時の注意点も

日本文化を代表する「着物」。結婚式などのフォーマルな場面から古都への旅行などのカジュアルな場面まで、さまざまなシチュエーションで着用されています。

しかし、実際に着用しようと思っても「着物にはどんな種類があるの」「着物の着用には何が必要なの?」と疑問を抱く方も少なくないはず。日常的に着用する洋服とは違い、戸惑うこともあるでしょう。

そこで今回は、着物の種類や着用時の注意点など、着物の「いろは」を徹底解説します。これから着物の着用を考えている方にとって参考になる話ばかりですので、ぜひ最後までご覧ください。

着物の歴史

着物の発祥は、縄文時代に遡ります。当時は布に開けた穴に頭を通す「貫頭衣(かんとうい)」や、布を体に巻きつける「巻布衣(かんぷい)」が用いられました。その後、奈良時代にはズボン型やスカート型の衣服を上衣に組み合わせたものや、ワンピース型のものが主流となったのです。

現在も着用されている形での着物が誕生したのは、平安時代。麻を使用した涼しげな着物から重ね着をしたものまで、気候に合わせて着物を楽しめるようになりました。

また、大陸文化の流入や日本文化の発展などによって、色の組み合わせも重視されるように。庶民・貴族などの階級を表す色や季節の色など、日本ならではの色の調和を重んじる伝統ができあがりました。

現代では日常生活で着物を着用することは少なくなりました。しかし、結婚式や卒業式、成人式などのフォーマルな場面では、正装として多くの方に着用されています。

着物を着用するメリット

続いて、着物を着用するメリットについて解説します。

メリットは、大きくわけて次の3つです。

  • 日本らしさを演出できる
  • 親から子へ受け継ぐことができる
  • 古都になじむ

日本らしさを演出できる

着物を着用する最大のメリットは、日本らしさを演出できることです。

古代からの非常に長い歴史を持つ着物は、着用するだけで平安時代を思わせるような雰囲気を纏えます。

冠婚葬祭などの式典では、必ずしも着物を着用する必要はありません。しかし、「和を重んじたい」「日本ならではの美しい雰囲気に仕上げたい」と考える方には、着物の着用がぴったりでしょう。

親から子へ受け継ぐことができる

続いてのメリットは、着物を親から子へ受け継ぐことができること。

着物を手に入れる方法として、レンタルや購入の他に「おさがりをもらう」という方法があります。特に成人式や結婚式などのめでたい席では、祖母や母親から受け継がれた着物を子が着用することは珍しくありません。

このように、親から子へ着物や伝統を受け継ぐことができる点も、着物を着用するメリットです。

古都になじむ

古都の雰囲気になじめることも、着物を着用するメリットです。

京都や奈良、鎌倉など、古くからの日本の建物が並ぶ街には、日本ならではの美しさを放つ着物がぴったり。「京都旅行では着物を着て街を散策したい」と考える方も多いですよね。

着物を着用すれば、古き良き街並みになじみながらその場の雰囲気を楽しめますよ。

着物を着用するデメリット

続いて、着物を着用するデメリットについて紹介します。

デメリットは、次の3つです。

  • 着用に時間がかかる
  • 動きにくい
  • 気温による脱ぎ着がしにくい

メリット・デメリットを加味して、「自分に着物は合わない」と感じた場合、他の正装を検討するのがおすすめです。

着用に時間がかかる

1つ目のデメリットは、着物の着用に時間がかかることです。

着物の着付け時間は、カジュアルな訪問着であっても30分程度、振袖などの正装であれば50分程度と言われています。ヘアセットやメイクの時間も合わせると、トータルで1時間半〜2時間程度かかるのが一般的です。

着付けに時間がかかることで「当日は早めに家を出なければならない」などの制約があります。

動きにくい

2つ目のデメリットは、動きにくいこと。帯で締め上げたり、着物の種類によっては重ね着をしたりといった特性上、洋装と比べると身動きが取りにくいという特徴があります。

思うように身体を動かしにくいため、移動や諸々の所作には気を遣わなければなりません。また、帯の締め上げによって着用しているだけで身体が疲れてしまうことも。

着物の着用に慣れれば基本的な動きは容易にできるようになりますが、洋装と比べて動きにくい点は着物のデメリットと言えます。

気温による脱ぎ着がしにくい

3つ目のデメリットは、気温による脱ぎ着がしにくいことです。

着物の袖は、基本的に長いのが特徴。気温の低い日には重ね着が可能ですが、夏などの暑い日における体温調節には限界があります。冬であっても室内の温度が高い場合には体温調節に困るケースもあるでしょう。

このように脱ぎ着による体温調節がしにくい点は、着物を着用するデメリットの1つです。気温の高い日に着物を着用する場合は、首筋や脇に冷却シートを貼るなどの工夫を施しましょう。

着物を手に入れる方法

続いて、着物を手に入れる方法についてまとめました。

  • 購入する
  • レンタルする
  • お下がりをもらう

購入する

着物の購入は、これから頻繁に着用することが見込まれる場合におすすめ。何度もレンタルするより、思い切って購入した方がコストパフォーマンスも良いでしょう。

購入するのにおすすめなのが、略礼装に分類される着物。訪問着や付け下げなどは1着もっておくだけで、フォーマルなシーンからカジュアルなシーンまでさまざまな場面で大活躍です。

レンタルする

成人式や卒業式などの式典のみで着用する場合は、レンタルするのがおすすめです。

特に式典で着用する格式高い着物は高価なものが多いため、レンタルで済ませる方が多い傾向にあります。

なお、店舗によっては着付けやヘアメイクまでトータルサポートしてくれる場合もあります。実際にレンタルする際は、店舗に問い合わせてみましょう。

お下がりをもらう

「着物を着たいけれど、なるべく費用を抑えたい」という方は、家族や親戚からお下がりをもらうのも1つの方法です。

特に成人式で着用する振袖においては、祖母や母親から受け継がれた着物を子どもが着用するパターンも少なくありません。

一昔前に仕立てられた着物は重厚感のあるものが多く、今どきの着物とは違った高級感を味わえます。何より、大切な親族から受け継がれた着物は、当人にとって金額以上の価値があるものでしょう。

着物の種類〜礼装〜

続いて、礼装に当てはまる着物の種類を紹介します。

礼装とは、着物の中でもフォーマルなシーンで着用されるものを指します。着物の中でも最も格式が高く、冠婚葬祭の出席などに用いられるのが特徴です。

主な礼装は、次の3つです。

  • 留袖
  • 振袖
  • 喪服

留袖

留袖とは、振袖の袖を短く留めた着物をいいます。「黒留袖」と「色留袖」の2種類があり、黒留袖を着用できるのは、既婚女性のみ。もともと独身時代に着用していた着物を、結婚を機に袖を短く仕立て直したものが起源と言われています。

なお、袖を「切る」と表すと「縁を切る」ことを連想させるため、袖を「留める」といわれています。

特に黒留袖は最も格式の高い着物であり、結婚式で新郎新婦の母・祖母・親戚が着用するのが一般的です。

振袖

振袖とは、長いたもとのある袖がついた着物。未婚の成人女性が着用する第一礼装として知られています。振袖の袖が長い理由は、舞踊を習う際に身振りを美しく見せるため、年頃の娘に降りかかる厄を振り払うためなどの説が有名です。

一般的な着用シーンは、成人式や結婚式の披露宴。その他、未婚女性が式典や発表会に出席する場合にも着用されます。

喪服

喪服とは、喪中において着用する着物です。色味は、黒や薄墨色(うすずみいろ)が一般的。主な着用シーンは葬儀で、喪主や遺族だけでなく参列者や弔問客も着用します。

喪服は、正喪服・準喪服・略喪服の3種類に分かれます。

着物の種類〜略礼装〜

続いて、略礼装の種類について解説します。

略礼装とは、礼装に次いで格式の高い着物。礼装と比べて着用ルールが少なく、結婚式だけでなくパーティーなどのラフなシーンでも着用できます。

主な略礼装は、次の3つです。

  • 訪問着
  • 付け下げ
  • 色無地

訪問着

訪問着とは、さまざなシーンで用いられる一般的な着物です。留袖では柄が帯より下の位置に入っているのに対し、訪問着は胸元にも入っているのが特徴です。

色や柄の種類の豊富さも、訪問着の魅力。観劇やお茶席から、同窓会やパーティーまで、シーンに合わせたものを選べます。

付け下げ

付け下げとは、訪問着と並ぶ略礼装の着物。訪問着が着物の縫い目を跨いで柄が施されているのに対し、付け下げでは柄が縫い目を跨がないのが特徴です。

結婚式や披露宴、お見合いなど、訪問着と同じく幅広いシチュエーションで活躍する点も魅力です。フォーマルにもカジュアルにも着られる上、訪問着よりも落ち着いた印象に仕上がるため、1枚もっておくと便利でしょう。

色無地

色無地とは、着物の中でも一色染めかつ地紋以外の柄が入っていない着物のことです。家紋入りであれば略礼装、無しであれば次章で紹介するおしゃれ着の「小紋」に当てはまります。

略礼装の中でも控えめな装いですので、特に落ち着いた印象を演出したいときにぴったりな1着です。

着物の種類〜おしゃれ着〜

続いて、着物の中でもおしゃれ着に該当するものをピックアップしました。

主なおしゃれ着は、次の2つ。数ある着物の中でも、ラフなシーンで活用されているのが特徴です。

  • 小紋
  • 浴衣

小紋

小紋とは、着物の中でも全体的に同様の模様が繰り返し入っている着物です。

元々は型染めという技法で作られた模様の種類のことを指しました。しかし、現代の小紋はビジュアルの幅が広いのが特徴的です。

普段使いやちょっとしたおしゃれをしたいときにぴったりな着物です。

浴衣

浴衣とは、主に夏に着用する着物です。夏祭りや花火大会、縁日などで着用されることが多く、着物の中でも最もカジュアルな衣服といえるでしょう。

生地の素材は木綿で、着物の着用に必要な肌襦袢なども不要。暑い夏でも快適に着用できるのが特徴です。

着物に必要な小物

着物をきれいに着用するには、次のような小物類が必要です。

  • 帯板(おびいた)
  • 帯枕(おびまくら)
  • 帯揚げ(おびあげ)
  • 帯〆(おびじめ)
  • ウエスト補正
  • コーリンベルト
  • 伊達〆(だてじめ)
  • マジックベルト
  • 三連ひも
  • 衿芯(えりしん)
  • 重ね衿
  • 腰紐
  • 長襦袢(ながじゅばん)

帯板は、胴まわりのシワを防止するために帯の間に挟むもの。背中に着物独特の膨らみを作るために、帯枕を挿入します。

長襦袢とは、肌着と着物の間に着用するものです。長襦袢の襟には衿芯を入れて、衿まわりの形を整えます。

その他にも、着物には上記のようにたくさんの小物が必要になります。「こんなにたくさんの小物が必要なのか……」と驚く方もいるでしょう。しかし、実際に着物を購入・レンタルする際は、スタッフに小物類をまとめて案内してもらえる場合もあります。不安であれば、購入・レンタルの際に相談しましょう。

着物に必要な下着

着物の着用に必要な下着は、主に次の3つです。

  • 肌襦袢(はだじゅばん)
  • 和装用ブラジャー
  • 裾よけ

下着の中でも肌襦袢は上半身、裾よけは下半身に利用します。中には肌襦袢と裾よけが一体となったワンピース型の下着もあります。どちらを使用するかは本人次第ですので、自分にあったものを使用しましょう。

ブラジャーは普段使いしているものではなく、「和装用ブラジャー」を着用するのが一般的。着物は体の凹凸が少ない方が、きれいに着用できます。そのため、和装用ブラジャーによってバストの膨らみを抑え、着物に合うシルエットを作る必要があります。

着物を着用する際の注意点

最後に、着物を着用する際の注意点についてまとめました。

いずれも着物をきれいに着用するために大切なことですので、ぜひ参考にしてください。

  • 大きめの傘を用意しておく
  • 食事のときに汚さないようにする
  • しばらく着用しない着物はクリーニングへ

大きめの傘を用意しておく

雨が予想される日であれば、大きめの傘を用意しておきましょう。

雨が降ったとき、着物の着込みや帯の出っ張りによって、洋装と比べて濡れやすくなります。傘に収まっているつもりが、帯の部分が傘からはみ出して濡れてしまう可能性もあるでしょう。

また、着物の場合は基本的に下駄を履くため、雨によって足袋がダイレクトに濡れてしまうことも。大きい傘とあわせて、足袋カバーや替えの足袋をもっておくのがおすすめです。

食事のときに汚さないようにする

着物を着用するときは、食事の際にも着物を汚さないように気をつけましょう。

特に振袖などのたもとが長い着物は、気づかないうちに食べ物に袖がつき、汚れてしまうケースが少なくありません。

せっかくの着物をキレイにキープできるよう、食事の際にも気を遣いましょう。

しばらく着用しない着物はクリーニングへ

購入品やお下がりの着物を着用する場合、着用後しばらく着る予定がない場合はクリーニングに出しましょう。

着用した着物をそのまま放置してしまうと、品質の低下につながります。今後も長く美しく着物を着用するために、クリーニングに出して清潔な状態をキープしましょう。

まとめ

以上、着物の種類や歴史、着用時の注意点など、着物にまつわる知識をまるっと解説しました。着物のメリットやデメリットを知った上で、由緒漂う着物をぜひ楽しんでください。

なお、着物の着用に必要なアイテムはたくさんありますが、着物の販売店・レンタル店によっては着物とセットで案内してもらえるケースもあります。特に着付けは大変ですから、不慣れな方は熟練の腕を持ったプロに頼むと良いでしょう。

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